バーミキュラに並べ!日本製造業のポテンシャルを120%活かすためのブランディングの考え方
バーミキュラって知ってます?
Staub、ル・クルーゼに並んで鋳物ホーロー鍋ブランドのバーミキュラ。こないだ友人宅でバーミキュラがあってさ、それで調理した鶏がほろほろで。とんでもなく美味しかったんですよね。
またキャッチコピーがいいんよね。「手料理と、生きよう。」ってことで。
僕自身もかなり自炊はするので、バルミューダはじめ、知ってる人は知っている調理器具をいくつか持っているんだけども、バーミキュラもとてもいいなと思ってました。
てことで前々から気になってはいたメーカーなんだけど、調べてみたら結構面白い事例だったんですよね。
バーミキュラ。実は倒産寸前だった?
バーミキュラのオーナー企業は愛知ドビーという企業名。
当初「土方鋳造所」としてスタートしましたが、生地・ドビー織を作るための繊維機械「ドビー機」を製造することになりました。その際、1965年には社名が「愛知ドビー」に変わった経緯とのこと。
また、船舶やクレーン車に使われる油圧部品という精密部品を製造する下請けの形もとっており、いわゆる町工場でした。
同社が扱っている鋳物(いもの)とは、高温で溶かした金属を砂や金属、樹脂、石膏などの型に流し込み、冷やして固めた製品です。
鋳物を作る工程を「鋳造(ちゅうぞう)」、溶けた金属を流し込む型を「鋳型(いがた)」といいます。
この鋳造に長けている点がのちにバーミキュラに繋がってるのですが、まぁこの手の成功事例に必須な高い技術力はすでにあった様子です。
ただ当時、主力のドビー機が繊維業界の衰退の影響を受けて開発需要がほぼなくなったのだそう。そこで、下請けだけではいけないと思った同社は新規商品”バーミキュラ”の開発に踏み切るわけです。
当社の特長は町工場ながら、鉄を溶かして形をつくる「鋳造工程」と、鋳造で完成した鉄の鋳物を精密に削る「精密加工工程」の両方をもっていることでしたので、その特長を活かして「世界最高の製品を作る」ということになりましたが、当初は全くアイデアも浮かびませんでした。そんななか、鋳物の特長を調べていく内に、鋳物が「調理」に非常に適していることがわかりました。
特にアウトドアで使う鋳物の鍋である「ダッチオーブン」は「魔法の鍋」と呼ばれるほど美味しく調理ができ、海外製の鋳物ホーロー鍋は何冊も書店でレシピブックが並ぶほどの人気だとわかりました。
ユーザー層に合わせたマーケ施策も面白い
調理に適していることがわかり、制作に踏み切った”無水調理”ができるホーロー鍋。
商品発売前から開始したマーケティング初期フェーズも面白く、想定ターゲット層に支持されている料理専門家や料理ブロガー、現役主婦といった”イノベーター層”へアプローチ。
具体的には招待制の料理勉強会を開催することで、イノベーター層の商品理解とブランドロイヤリティが向上したとのこと。
この際に招待する人を選び、記事を書いてもらう人はやはり熱量のこもった記事になりますよね。で、その後に大衆向けのメディアPR。段階を追ってユーザー層向けにプロモーションしてたりするんですよね。
ホーロー鍋という勝負の場を定義したことで、そこから紐づけられるようにステップを描けているように思います。非常に適切。
それと、全体的にブランドパートナーの立ち位置を担ってるデザイン制作の会社もいました。
特段通販などのデジタルの体験設計にはプロの手が多分に入っていて、やはり全体的な体験設計ができていると大きなビジネスの効果に繋がるなーと実感しています。(Webを見てもらうとわかるが、クオリティがとても高いです)
ここはマネできる、勝ちポイント
さまざまなユニークな背景はともかくとして、他の企業でも、外部にパートナー的にプロダクトデザイン管理をおいてるような構図はマネできそうと感じました。
よくあるんだけど、製品のデザインって実は自分でやるとかなりバイアスかかって難しいんすよね。
例えば包丁。切れ味鋭いものを職人さんは作っちゃいがちなんだけど、包丁を使うユーザーである主婦層からするとそこまで切れ味鋭いものっていうのは逆に怖いから反購買理由になっちゃうんです。自分たちで作ったものは主観が多く入りすぎちゃうので、強みだと思っていたものがうまく働かない可能性があります。
なのでこういった直接ユーザーが触れる部分の制作には、外部、特にデザイン会社の手を入れるっていうのは非常に有効です。
ちなみに業界ではこういった活動を”プロダクトデザイン”というだけではなく、デザイン思考やサービスデザインっていうラベルで手法が確立されてたりもする。商品開発には有効なんですよね
製造業はやはり大きなポテンシャルを秘めている
僕自身ブランディングを生業としているため、ポジショントークになってしまうかもですが、本事例に違わず、やり方を整理すれば十分に業績を伸ばせる企業は多くあると思います。
特に、自社の技術に自信がある方はその可能性も高い。
もちろんブランディングをするだけで全てが解決するわけではなく、まずそもそもの経営方針から思案する必要がある場合や、従業員のモチベーションから高めなければならない場合など多くの障害はつきものですが、それらも含めて一度ブランディングやデザインに期待し、より製造業がこれまで以上の成長を描ける未来を期待しています。
もしこの記事を見て少しでもブランディングに興味が出た方はお気軽にお問い合わせからご相談くださいませ。
Podcastも始まっています!
ブランディングについてのあれこれを語ったPodcastを開始しました。
デザイン×ビジネスの観点でブランディングについてのあれこれを語るトーク番組。
自社のロゴやデザイン、雰囲気が実は気に入っていないモヤモヤしたあなたのためのブランドパートナーです。
聞くだけで社長へ、自社ブランディングの必要性について説得ができちゃうかも!?
ぜひ、聞いてみてくださいね